現在[[アーバンシー]]という競走馬*1のWikipediaを改稿している最中なのですが、この資料集めにはWeb OYA-bunkoというデータベースを活用しています。ご存じの方も多いと思いますが、このデータベース、とんでもなく便利です。なんと雑誌の記事検索が可能なんです。
というわけで今回はWeb OYA-bunkoがどれほど素晴らしいデータベースなのかという話をしていこうと思います。
なお、はじめに申し上げておきますが、Web OYA-bunkoはベタ褒めする一方で大宅壮一文庫に対しては批判的な記事になります。
この記事で言いたいこと
1. Web OYA-bunkoは最高のデータベース
2. 国会図書館に行って使うのが一番便利
Web OYA-bunkoとは?
大宅壮一文庫という雑誌専門図書館が提供しているデータベースで、上述の通り雑誌記事の見出し検索が可能です。
すなわち「雑誌には取り上げられるが、1冊の本になるほどではない物事」を調べるのにとても便利です。たとえばEugene OrmandyさんはWeb OYAを活用してフルーツサンドや名曲喫茶のウィキペディア記事を書いています*2。
そして、「雑誌には取り上げられるが、1冊の本になるほどではない物事」の最たる例に競走馬があります。たとえばオグリキャップやディープインパクトのように競馬ファン以外にも知られるような伝説的名馬であれば単独で本になりますが、ほとんどの「名馬」は単独では本になりません。ましてや現在執筆中のアーバンシーなんて海外の馬ですから日本語で単独書籍になるわけがありません。そういう時に大活躍するのがWeb OYA-bunkoというわけです。
NDLオンラインでは見つからない記事がこんなにたくさん
まずは試しにみんな大好き国会図書館が提供している国立国会図書館オンライン(NDL ONLINE)で「アーバンシー」と検索をかけてみましょう。
はい、競走馬アーバンシーについてのヒットは0件です。いくら歴史的名馬とはいえ欧州の、しかも現役時代よりも繁殖牝馬時代のほうが活躍したアーバンシーでは1冊の本は書けませんからね。そりゃこうなります。とはいえ欧州屈指の名馬ですから雑誌記事にはなっているはずです。
ではWeb OYA-bunkoで検索してみましょう。「アーバンシー」と検索をかけると、『優駿』2001年7月号と2009年6月号、『週刊ポスト』2019年10月25日号に記事があることがわかりました。すごい!(国会図書館で使っているのでスクショはありません><)
アーバンシーの息子の記事も参照したいので「ガリレオ」「シーザスターズ」についても検索をかけたところ、『優駿』内に前者は8件、後者も8件の記事が存在することがわかりました*3*4。
特にガリレオ、シーザスターズ共に引退から数年後に特集記事が書かれていることがわかったのがとても大きいです。現役時代の記事はせいぜい1~2年分の優駿を全部読めば見つかるので大した労力ではないのですが、現役引退後の特集を探すとなると20年分の優駿をすべて読まなければならないので……。もう競走馬記事はWeb OYAなしでは書けませんね。
実は見つからない記事も
ここまでで欲しい記事はだいぶ集まりましたが、実は検索にヒットしない記事もいくつかあります。
たとえば『優駿』2019年3月号および6月号に栗山求「GIホースが紡ぐ血」という連載が載っており、3月号はアーバンシー、6月号はガリレオを取り扱っていますが、これは検索に出てきませんでした。毎月3頭の名馬をピックアップして解説する連載なので、おそらく大宅文庫さんのデータベースには記事の小見出しまでは登録されていないのかなと思います。これらの記事は筆者・栗山求さんのブログに告知があったので見つけることができました。
それゆえ過信は禁物で、Web OYA以外の方法から色々探してみるのも大事です。あくまでも記事探しのひとつの手段として利用しましょう。
国会図書館との相性が良すぎ問題
こんな便利ツール、さぞお高いのでしょう?と思われた方、なんと国会図書館に行けば無料で使えちゃうんです。なんなら都立中央図書館でも使えます。というか自治体の図書館でもわりと使えるところがあります。もちろん本家本元の大宅壮一文庫に行っても使えます。
特に国会図書館との相性は抜群で、大宅文庫にある雑誌はたいてい国会図書館にもあるのでそのまま読めちゃいます。しかも国会図書館のコピー料金は大宅文庫の1/3以下*5。入館料も無料で、資料の取り寄せ冊数は無制限*6。しかも国立国会図書館デジタルコレクションは驚異の全文検索が可能で、館内からなら2000年までの一部の雑誌(主に週刊誌)も読める! うーん、クソ高い税金を払っている甲斐がありますね。これが日本国本気の民業圧迫です、NHKなんかかわいいものですよ。そろそろこの記事のタイトルを「国会図書館が調べ物に便利すぎてヤバイ」に変えたほうがいい気がしてきました*7。
国会図書館の便利さは別格すぎるので置いておくとしても、大宅壮一文庫さんはいろいろと不便さが目立ちます。立地は京王線の八幡山駅と、京王線ユーザーでもないと行きづらい場所にあります。国会図書館や都立中央図書館は都心部にあるので都内どこからでも比較的アクセスしやすいですね。また、都立中央図書館は日曜に開館することで国会図書館と差別化できていますが、大宅文庫は国会図書館と同じで日曜休館なんですよね。ついでに都立中央図書館は新しめの書籍であればセルフコピーが可能で、料金は10円です。職員さんのコピーでも25円。安すぎる。もちろんWeb OYAも無料で利用できます*8。
特に日曜日に開いていないのは個人的には致命的だと思っていて、私のようなサラリーマンが土曜日にどこかに調べ物をしに行くとなったら国会図書館一択なんですよ。雑誌だけでなく一般書籍も読めますし。日曜に開いていれば蔵書数的に競争相手が都立図書館くらいになるわけです。それなら、中央図書館は雑誌が弱い、かといって西国分寺の多摩図書館まで行くのは面倒くさい。なら近場の大宅文庫で済ませよう、という考えになるかもしれません。
というわけで、Web OYA-bunkoは超便利ツールですが、京王線ユーザーを除けば大宅文庫以外の図書館から使ったほうが圧倒的に便利です。Web OYA-bunkoの契約費用は従量課金性のようなので、国会図書館と都立中央図書館で使いまくることで還元していきましょう:D
*1:日本でたとえるならディープインパクトの母・[[ウインドインハーヘア]]くらいすごい馬です。息子があまりにも強すぎて、牝馬でありながら欧州競馬の血統表を自分色に染め上げてしまいました。
*2:「雑誌専門図書館の大宅壮一文庫をウィキペディア記事の編集に活用する – Diff」も参照
*3:アーバンシーでヒットした2001年7月号と2009年6月号は除く。
*4:ガリレオは地動説のほうも引っかかってしまうのでスポーツ分野に絞って検索しています。
*5:大宅文庫のモノクロコピー料金は85円。国会図書館はモノクロA4B4なら25円。
*6:大宅壮一文庫は入館料500円で15冊まで、追加10冊ごとに100円。
*7:一応不便な点もあって、WebOYAは専門資料室のPCからじゃないと使えません。国会図書館に行ったことがある方ならご存じの通り本館・新館の図書カウンターの周りにたくさんPCがありますが、それらからは使えません。